税込1万円未満の返還インボイス、交付不要!
2023/10/01

 いよいよ消費税のインボイス制度の運用が始まりました。


 インボイス登録事業者が国内で行った消費税のかかる取引について、令和5年税制改正で以下の改正が行われました。


 当初、消費税のかかる売上取引については、売上げた事業者には、金額の多寡にかかわらず、値引きや返品などを行った場合に、『返還インボイス』の交付義務がありました。




 たとえば、事業者は売上げについて端数切捨てで相手側に請求することがよくあります。


この値引きについても『返還インボイス』を作成し、相手に交付しなくてはならないのは、重要性に乏しく
かつ納税者を苦しめるだけの作業と国も考えたのでしょうか。


 令和5年度税制改正により、税込1万円未満の値引等である場合は、『返還インボイス』の交付義務が免除となりました。


 この措置はすべてのインボイス発行事業者が対象となり、適用期限のない措置となります。
 

祖父母からの教育資金の一括贈与
2023/08/06

 弊事務所ではお孫さんへ教育資金の一括贈与を行うお客様が少しずつ増えています。

自己の所有する現預金を生涯自分一人では使いきれないであろう、と判断された高齢のお客様が利用されています。


 孫一人への教育資金の一括贈与の非課税枠は1500万円(使途によっては500万円)ですが、使い道に学校の授業料など一定の、ある意味厳しい制限が設けられており、贈与を行う方にとっては孫に無駄遣いなどされない、将来に役立つ贈与として安心できる内容となっています。


 さて、この教育資金の一括贈与は、税金面でも利点があります。
 
まず、贈与を受ける孫には30歳になるまで贈与税がかかりません。

 次に、贈与を行う方が、孫が23歳になる以前に死亡した場合、贈与した金額から教育資金として支出した残額は相続財産とみなされません。


富裕層への優遇税制だという批判を受け、令和5年税制改正では相続税の課税対象となる財産が5億円を超える場合は、相続税財産に加算される、など改正が行われました。
 

しかし、一定の条件下であれば自己資金の移動(正確には、信託財産)に贈与税もかからず、相続税もかからない、というのはある意味すごいことです。

 一定の条件下、と書きましたが、これが複雑、税の予測が必要でうかつに行動に移せないと贈与と思います。


 教育資金の一括贈与は、窓口の金融機関と契約を結ぶのですが、贈与税や相続税に影響が及ぶ事案ですので、事前に税理士にご相談されることをお勧めいたします。
 
 

遺言書を作成したい!
2023/05/07

 法務省は年内にも有識者による研究会を立ち上げ2024年3月を目標に「デジタル遺言」の方向性を提言します(2023年5月6日付日本経済新聞)。

「デジタル遺言」とは、遺言者がネット上で顔写真撮影などと組み合わせ遺言書を作成し、電子証明書をつけてクラウドで保管するというものです。


 2019年の民法改正で、自筆遺言書に財産目録のパソコン利用が認められ、

翌2020年7月には法務局が自筆遺言の保管制度を開始しました。

 遺言書の作成方法はこのように進化し続けています。

 作成方法は進化しているものの、遺言の内容をどうするかは進化とは無縁です。

その方の人生の最終決算、人生を賭けたきわめて困難な作業といえるでしょう。

一歩間違えば遺言書が「争い」を誘発しますし、「争い」ではなくても予期せぬ事態を招くことがあるからです。

 たとえば、Aさんが「私の〇〇の財産を、子供の△△に相続させる。」と遺言書に書いたとします。

このとき、Aさんはよもや子供の△△が自分より先に亡くなることは想像だにしていません。

でも、実際には起こりうることで、私も経験しました。

遺言には予備的遺言(もし△△が自分より先に死亡した場合には・・云々)が必須です。

これがないと、たとえば上記の例では、子供△△に行くはずの財産〇〇が相続人全員の共有財産となってしまいます。


 残された者のために「遺言書を書きたい!」

この気持ちを実現するためには、専門家の知見が必要かと思います。


 先日も50代のあるお客様から「遺言書を書いてみたのですが、見てもらえますか」と自筆遺言書を差し出されました。いろいろ指摘させていただき書き直しをお勧めしました。「え、そこまで考えるのですか!」と驚かれたようです。


 時間をかけて考え、専門家にも相談し、

人生最後の意思を表明する遺言書が

残された方々の幸せを実現するものであって欲しいと思います。
 

 
 
 

退職手当金等を受けた方の確定申告について
2023/02/05

 退職手当金等は、

長年の勤労に対する報償的な給与として一時的に支払われるため

税負担が軽くなるよう税法上の取扱いが優遇されています。


 ところで退職手当金等とは、

  会社から支払われる退職手当金等以外にも、

小規模企業共済による共済金を一括で受け取る場合

iDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金で受け取る場合

なども

 退職所得として取り扱われます。


 加入期間に応じた退職金所得控除額を差し引いた額の1/2が課税対象となります。


 退職手当金の支給者(会社など)に

「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、

退職手当金の支給者(会社など)が所得税額を計算し源泉徴収するため、


原則としては確定申告の申告は不要です。


 他方、退職手当金の支給者(会社など)に

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、

 20.42%の源泉所得税が徴収されていますので、


 確定申告を行い、所得税を精算なさってください。




 
 

令和5年度税制改正―インボイス制度の見直し―
2023/01/01

 いよいよ今年10月1日から消費税の大改正であるインボイス制度(適格請求所等保存法式)の運用が始まります。

 弊事務所では、すべてのお客様にインボイス制度の案内を行っております。

 
 事業を円滑に運営するためにはインボイスの登録事業者となる必要があります。

 が、悩ましいのは、これまで免税事業者であった事業者の選択です。
 
 インボイス発行事業者を選択することは、消費税の課税事業者になることを意味し、

 基準期間の課税売上が1000万円以下の事業者も「あえて」課税事業者を選択しなくてはなりません。

 消費税を支払うのか、はたまた消費税分の値引交渉に応じるのか。取引を打ち切られるリスクを負うのか。
 
 免税事業者の悩みは深い。

 免税事業者の悩みばかりではありません。

 課税事業者であっても取引先に免税事業者がいる場合、どのように対処したらよいのか事業の根幹に係る大問題です。
 

 令和4年12月23日に「令和5年度税制大綱」が閣議決定しました。
 
 これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を2割とすることができる3年間(令和5年10月から令和8年9月までの日の属する各事業年度)の負担軽減措置が講じられることなりました。
 

 令和5年度税制改正を勘案しつつ、個々の事業者の状況に応じ丁寧に相談にのってまいりたいと思います。





 

給与所得者の副業―税法上どのように扱うか―
2022/10/15

 国税庁がパブリックコメント(意見募集)を行っていた所得税基本通達の改正案では、

 給与所得者の副業に係る所得等について、

 収入金額が300万円以下の場合、

 原則として「事業所得」ではなく
 「雑所得」で取り扱うことが示されましたが、

 7000件を超す意見が寄せられた結果、

 改正案を修正した通達が公表されました 


 本業か副業かは問わず

 「記帳・帳簿の保存の有無」によって、

 事業所得と業務に係る雑所得とするかを判定する!

 という画期的な内容になりました。


 事業所得の節税メリットとは、
 青色申告特別控除(10万円、55万円、65万円)という特典を利用することにより課税される所得を圧縮することができることを指しています。

 雑所得にはこうした特典がありません。

 具体的には、「事業所得と認められるかどうかは社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかで判定する」ことを原則としつつ、

「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、業務にかかる雑所得に該当する」としました。


 ただし、帳簿書類を保存している場合でも収入金額が僅少である場合や、所得を得る活動に営利性がない場合は個別に判断することとなります。

 一方、記帳・帳簿の保存をしていない場合は、原則として事業集として認められず、業務に係る雑所得に区分されます。

 


申告期限までに遺産分割が出来ない場合
2022/09/30

 相続税は、相続等により取得した財産の価額(債務などを控除し、相続開始前の贈与財産の価額を加算)が、基礎控除「3千万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合に課税対象となり、被相続人が死亡をしたことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税をすることになっています。


 お亡くなりになった方が遺言書を残していなかった場合、相続人間で遺産分割協議を行って取得する財産を決めます。


 この遺産分割協議がすんなりいかない、すなわち「揉める」場合でも申告期限までに申告を行う必要があります。

 すなわち、未分割でいったんは申告しなくてはなりません。
 
 具体的には、法定相続分に従って、各相続人が相続したものとして相続税を計算して申告を行います。
 

 申告後に遺産分割が行われ、その内容がすでに申告した内容と異なる場合には、
 実際に分割した財産の額に基づき、修正申告(不足税金を支払う)または更正の請求(納めすぎた税金を返してもらう)を行うことになります。
  

 相続税を減額できる特例(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例)を使うために、当初の未分割で行なう申告書には「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することが必須です。

 これを忘れると特例は使えませんので、注意が必要です。


 相続税申告は時間との闘い!細心の注意が必要です。





令和4年4月から施行される主な税制 
2022/05/16

 賃上げ促進税制が以下のように拡充されました。

  
 給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、

 令和4年4月以後開始事業年度(個人事業は令和4年1月にさかのぼる)から以下のように拡充されます。


 資本金1億円以下の企業等について、

 雇用者全体の給与等支給額が前年度比1.5%以上増加した場合に増加額の15%

 前年度比2.5%以上増加した場合は30%の税額控除となります。


 教育訓練費が前年度比10%以上増加している場合には税額控除率に10%を加算できます。


 税額控除額の上限は、法人税額または所得税額の20%です。


 なお、この場合、給与等に充てるため他の者から受け取る金額、

 例えば、

 雇用調整調整助成金、キャリアアップ助成金(正社員化コース)などの給与に充てる助成金を受け取っている場合はこれを除外します。

 雇用安定助成金は例外的に含めます。

 活用ください。



  
 

令和4年1月から適用となる主な税制
2022/01/19

電子帳簿保存法の見直し

令和4年1月1日施行の『電子帳簿保存法』。

政府の準備不足から、企業の経理担当者でも知らない人が多いとされた『電子帳簿保存法』は、さっそく見直しです。

パソコンなどで作成した帳簿書類(電子帳簿等保存)や、紙で受領したり作成した領収書等を画像データで保存(スキャナ保存)について、事前承認が不要となり、要件が緩和されました。 

 メールに添付する請求書や領収書などの取引情報の授受も、一定要件のもとでデータ保存が必要とされていますが、令和5年まで紙での保存も認める経過措置が設けられています。



セルフメディケーション税制の見直し

 特定の医薬品について、健康検診や予防接種などの「一定の取り組み」を証明する書類の添付を条件とした『セルフメディケーション』税制。

購入費用が1万2千円を超す分について所得税の控除が受けられる税制です。

令和3年分の確定申告から「一定の取り組み」の証明書類は不要となり簡素化されます。



ふるさと納税の申告にかかる添付書類

 ふるさと納税を確定申告で行う場合、令和3年分から寄付先ごとの受領書に代えて、ふるさと納税仲介サイトが発行する「寄付金控除に関する証明書」の添付が可能になりました。
   




消費税税制の根幹を変える!インボイス制度
2021/11/03

1. インボイス(適格請求書等)って何?
 インボイス(invoice)とはもともとは(荷物の)送り状の意味ですが、
 この度、日本でも導入される消費税のインボイス制度におけるインボイスとは「適格請求書等」という意味です。

 このインボイスという請求書等がないと、消費税の課税仕入れが出来ない、という重大な影響を及ぼす制度です。
 インボイス(適格請求書等)の保存が仕入税額控除の条件となり、しかしながら、だれでもインボイスを発行できるわけではありません。

インボイスを発行するためには所轄税務署長に「適格請求書等発行事業者の登録申請書」を提出し、「適格請求書発行事業者」にならなくてはなりません。

 インボイス(適格請求書等)に、記載しなくてはならない事項は次のとおりです。

@ 請求書等の発行者の氏名・名称  A 登録番号  B 取引年月日 
C 取引内容 軽減税率対象品目である場合はその旨
D 税抜取引価額または税込取引価額を税率ごとに合計した金額 
E Dに対する消費税額および適用税率
F 請求書等受領者の氏名又は名称 (小売業や飲食店業については省略できます)

2. 登録申請のご案内
  適格請求書等発行事業者に認定されると、事業者登録番号および発行事業者の氏名や名称が国税庁ホームページで公表されます。この事業者登録番号を請求書に記載しなくてはなりません。事業者登録番号のない請求書では仕入税額控除が出来ません。
必然的に、適格請求書等発行事業者以外からは商品を購入しない・サービスを受けない、というような取引中止となる事態を招く可能性が大きいといえます。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年10月1日から運用開始となります。

これに先立ち、「適格請求書等発行事業者の登録申請」の受付が、今年2021年10月1日から開始されます。

 まだまだ時間があるとのんびりしておられません。


3. 注意が必要な事業者の皆様へ

 消費税の基準期間(2年前の事業年度)における課税売上高が1000万円以下の免税事業者は登録申請ができません。

 免税事業者であってもインボイス(適格請求書等)を発行する必要がある事業者の皆様におかれましては、まず、消費税の課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者となった上で、適格請求書等発行事業者の登録申請を行うことになります。

 こうして初めて「適格請求書発行事業者」としてインボイスを発行することができます。

 そもそも免税事業者が消費税を受け取ることは消費税の仕組みでは予定されておりません。

 しかし現実の商取引では、免税事業者でも外税で消費税を受領しているケースもあります。

 インボイス制度(適格請求書等保存方式)の運用が始まってからは、免税事業者が消費税相当額を記載した請求書・領収書など書類を発行した場合は、罰則規定が適用される模様です。

 
 免税事業者の皆様は適格請求書等発行事業者となるかどうかの検討が必要です。

 また、取引先が免税事業者なのか課税事業者なのかが分からなかったために免税事業者への支払いをこれまで課税仕入としてきた事業者の皆様においても、今後難しい判断を迫られることになるでしょう。

 たとえば、会社の建物や駐車場などを借りていた場合、課税仕入れとして会計処理を行ってきた事業者も免税事業者からの賃借であれば、課税仕入れとすることが出来なくなります。

 一方、顧客が一般消費者のみの場合は必ずしも適格請求書を交付する必要はありませんが、顧客に法人などの消費税の課税事業者が含まれる場合は検討が必要となるでしょう。

4. 鳥居税務会計がサポートいたします
 消費税制度の根幹を変えるような重大な制度といっても過言ではありませんので、慎重な判断が必要です。

 弊事務所も個々のお客様の状況を検討し、必要に応じ登録についてアドバイスさせていただく予定でおります。
 
 詳しい情報は、今後も鳥居税務会計事務所だより(FAX通信)などで随時ご案内してまいります。