令和6年6月から「定額減税」始まる!
2024/03/30

 令和5年10月の岸田総理が所信表明演説で最優先課税として掲げたのが経済。

その一つが「国民への還元」です。

令和6年税制改正の成立で、令和6年6月から定額減税が実施されます。


 複雑怪奇(日経クロステック2024/3/30)

と酷評されても仕方ないのは、以下のように複雑な制度設計のためです。


@減税と給付の組み合わせ

給与支給時に減税したのち、減税しきれない世帯に給付を行う。


A所得税(国税)と住民税(地方税)に分けて実施。

年収額、扶養親族の人数によっては減税タイミングが異なる。

所得税は令和6年6月から定額減税3万円を順次行っていき12月の年末調整で完了する。

個人住民税は令和6年7月から定額減税1万円を控除した後の年税額の11分の1の額を令和7年5月まで、給与から徴収する。


B年末調整で、残った所得税減税分を一括精算処理

残念ながら、年末調整だけで所得税の精算処理を終わらせることは出来ない!


C2024年に実施して終わりの一度限りの措置

待ったなしの対応!が事業者に迫られる。



 日本の企業の99.7%が中小企業です。(独立行政法人中小機構の調査)

 企業への事務負担が増大するのは目に見えています。

 生産性向上が喫緊の課題である中小企業にとっては足かせになることが予想されます。

 また地方自治体の事務量も増えるでしょう。


 お客様にはこの減税テクニックを理解し、間違えなく給与計算を行っていっていただくためのサポートが必要と思います。




自筆遺言書というもの
2024/01/07

 相続申告をご依頼のあるお客様から、「実はこんなものが出てきまして」とノートに書かれたお亡くなりになられた方(妻)の自筆遺言書を見せられました。

お亡くなりになられた方は弊事務所のお客様です。

 自筆、作成日が記載、押印など自筆遺言書としての書式は整っているように見受けられましたが、

内容が次男にすべてを相続させる、というものでかつ遺言執行者に次男を指定するというものでした。

「付言事項」として相続税手続きは税理士鳥居順子に依頼することと書かれ連絡先の電話番号も記載されていました。


 「これ、一応お見せしましたが、見なかったことにしていただけますか。破棄して良いですね」とご主人。


 破棄してはなりませんが、遺言書があってもそれは絶対でなく遺産分割協議をして相続人皆さんの合意があればそれが優先されます、とお話ししました。


 遺産分割協議の結果、相続人皆さんが納得し被相続人(お亡くなりになった方)およびその夫(子供たちにとっては父)に感謝する内容の分割となりました。


 自筆遺言が必ずしも理性的で思慮深い内容であるとは限らず、復讐・怒りといった情念のなかで書かれたものかも知れず、一概に遺言書が相続争いを防ぐ手段とは言えないと再確認しました。
 


税込1万円未満の返還インボイス、交付不要!
2023/10/01

 いよいよ消費税のインボイス制度の運用が始まりました。


 インボイス登録事業者が国内で行った消費税のかかる取引について、令和5年税制改正で以下の改正が行われました。


 当初、消費税のかかる売上取引については、売上げた事業者には、金額の多寡にかかわらず、値引きや返品などを行った場合に、『返還インボイス』の交付義務がありました。




 たとえば、事業者は売上げについて端数切捨てで相手側に請求することがよくあります。


この値引きについても『返還インボイス』を作成し、相手に交付しなくてはならないのは、重要性に乏しく
かつ納税者を苦しめるだけの作業と国も考えたのでしょうか。


 令和5年度税制改正により、税込1万円未満の値引等である場合は、『返還インボイス』の交付義務が免除となりました。


 この措置はすべてのインボイス発行事業者が対象となり、適用期限のない措置となります。
 

祖父母からの教育資金の一括贈与
2023/08/06

 弊事務所ではお孫さんへ教育資金の一括贈与を行うお客様が少しずつ増えています。

自己の所有する現預金を生涯自分一人では使いきれないであろう、と判断された高齢のお客様が利用されています。


 孫一人への教育資金の一括贈与の非課税枠は1500万円(使途によっては500万円)ですが、使い道に学校の授業料など一定の、ある意味厳しい制限が設けられており、贈与を行う方にとっては孫に無駄遣いなどされない、将来に役立つ贈与として安心できる内容となっています。


 さて、この教育資金の一括贈与は、税金面でも利点があります。
 
まず、贈与を受ける孫には30歳になるまで贈与税がかかりません。

 次に、贈与を行う方が、孫が23歳になる以前に死亡した場合、贈与した金額から教育資金として支出した残額は相続財産とみなされません。


富裕層への優遇税制だという批判を受け、令和5年税制改正では相続税の課税対象となる財産が5億円を超える場合は、相続税財産に加算される、など改正が行われました。
 

しかし、一定の条件下であれば自己資金の移動(正確には、信託財産)に贈与税もかからず、相続税もかからない、というのはある意味すごいことです。

 一定の条件下、と書きましたが、これが複雑、税の予測が必要でうかつに行動に移せないと贈与と思います。


 教育資金の一括贈与は、窓口の金融機関と契約を結ぶのですが、贈与税や相続税に影響が及ぶ事案ですので、事前に税理士にご相談されることをお勧めいたします。
 
 

遺言書を作成したい!
2023/05/07

 法務省は年内にも有識者による研究会を立ち上げ2024年3月を目標に「デジタル遺言」の方向性を提言します(2023年5月6日付日本経済新聞)。

「デジタル遺言」とは、遺言者がネット上で顔写真撮影などと組み合わせ遺言書を作成し、電子証明書をつけてクラウドで保管するというものです。


 2019年の民法改正で、自筆遺言書に財産目録のパソコン利用が認められ、

翌2020年7月には法務局が自筆遺言の保管制度を開始しました。

 遺言書の作成方法はこのように進化し続けています。

 作成方法は進化しているものの、遺言の内容をどうするかは進化とは無縁です。

その方の人生の最終決算、人生を賭けたきわめて困難な作業といえるでしょう。

一歩間違えば遺言書が「争い」を誘発しますし、「争い」ではなくても予期せぬ事態を招くことがあるからです。

 たとえば、Aさんが「私の〇〇の財産を、子供の△△に相続させる。」と遺言書に書いたとします。

このとき、Aさんはよもや子供の△△が自分より先に亡くなることは想像だにしていません。

でも、実際には起こりうることで、私も経験しました。

遺言には予備的遺言(もし△△が自分より先に死亡した場合には・・云々)が必須です。

これがないと、たとえば上記の例では、子供△△に行くはずの財産〇〇が相続人全員の共有財産となってしまいます。


 残された者のために「遺言書を書きたい!」

この気持ちを実現するためには、専門家の知見が必要かと思います。


 先日も50代のあるお客様から「遺言書を書いてみたのですが、見てもらえますか」と自筆遺言書を差し出されました。いろいろ指摘させていただき書き直しをお勧めしました。「え、そこまで考えるのですか!」と驚かれたようです。


 時間をかけて考え、専門家にも相談し、

人生最後の意思を表明する遺言書が

残された方々の幸せを実現するものであって欲しいと思います。
 

 
 
 

退職手当金等を受けた方の確定申告について
2023/02/05

 退職手当金等は、

長年の勤労に対する報償的な給与として一時的に支払われるため

税負担が軽くなるよう税法上の取扱いが優遇されています。


 ところで退職手当金等とは、

  会社から支払われる退職手当金等以外にも、

小規模企業共済による共済金を一括で受け取る場合

iDeCo(個人型確定拠出年金)を一時金で受け取る場合

なども

 退職所得として取り扱われます。


 加入期間に応じた退職金所得控除額を差し引いた額の1/2が課税対象となります。


 退職手当金の支給者(会社など)に

「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は、

退職手当金の支給者(会社など)が所得税額を計算し源泉徴収するため、


原則としては確定申告の申告は不要です。


 他方、退職手当金の支給者(会社など)に

「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、

 20.42%の源泉所得税が徴収されていますので、


 確定申告を行い、所得税を精算なさってください。




 
 

令和5年度税制改正―インボイス制度の見直し―
2023/01/01

 いよいよ今年10月1日から消費税の大改正であるインボイス制度(適格請求所等保存法式)の運用が始まります。

 弊事務所では、すべてのお客様にインボイス制度の案内を行っております。

 
 事業を円滑に運営するためにはインボイスの登録事業者となる必要があります。

 が、悩ましいのは、これまで免税事業者であった事業者の選択です。
 
 インボイス発行事業者を選択することは、消費税の課税事業者になることを意味し、

 基準期間の課税売上が1000万円以下の事業者も「あえて」課税事業者を選択しなくてはなりません。

 消費税を支払うのか、はたまた消費税分の値引交渉に応じるのか。取引を打ち切られるリスクを負うのか。
 
 免税事業者の悩みは深い。

 免税事業者の悩みばかりではありません。

 課税事業者であっても取引先に免税事業者がいる場合、どのように対処したらよいのか事業の根幹に係る大問題です。
 

 令和4年12月23日に「令和5年度税制大綱」が閣議決定しました。
 
 これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を2割とすることができる3年間(令和5年10月から令和8年9月までの日の属する各事業年度)の負担軽減措置が講じられることなりました。
 

 令和5年度税制改正を勘案しつつ、個々の事業者の状況に応じ丁寧に相談にのってまいりたいと思います。





 

給与所得者の副業―税法上どのように扱うか―
2022/10/15

 国税庁がパブリックコメント(意見募集)を行っていた所得税基本通達の改正案では、

 給与所得者の副業に係る所得等について、

 収入金額が300万円以下の場合、

 原則として「事業所得」ではなく
 「雑所得」で取り扱うことが示されましたが、

 7000件を超す意見が寄せられた結果、

 改正案を修正した通達が公表されました 


 本業か副業かは問わず

 「記帳・帳簿の保存の有無」によって、

 事業所得と業務に係る雑所得とするかを判定する!

 という画期的な内容になりました。


 事業所得の節税メリットとは、
 青色申告特別控除(10万円、55万円、65万円)という特典を利用することにより課税される所得を圧縮することができることを指しています。

 雑所得にはこうした特典がありません。

 具体的には、「事業所得と認められるかどうかは社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかで判定する」ことを原則としつつ、

「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合は、業務にかかる雑所得に該当する」としました。


 ただし、帳簿書類を保存している場合でも収入金額が僅少である場合や、所得を得る活動に営利性がない場合は個別に判断することとなります。

 一方、記帳・帳簿の保存をしていない場合は、原則として事業集として認められず、業務に係る雑所得に区分されます。

 


申告期限までに遺産分割が出来ない場合
2022/09/30

 相続税は、相続等により取得した財産の価額(債務などを控除し、相続開始前の贈与財産の価額を加算)が、基礎控除「3千万円+600万円×法定相続人の数」を超える場合に課税対象となり、被相続人が死亡をしたことを知った日の翌日から10か月以内に申告・納税をすることになっています。


 お亡くなりになった方が遺言書を残していなかった場合、相続人間で遺産分割協議を行って取得する財産を決めます。


 この遺産分割協議がすんなりいかない、すなわち「揉める」場合でも申告期限までに申告を行う必要があります。

 すなわち、未分割でいったんは申告しなくてはなりません。
 
 具体的には、法定相続分に従って、各相続人が相続したものとして相続税を計算して申告を行います。
 

 申告後に遺産分割が行われ、その内容がすでに申告した内容と異なる場合には、
 実際に分割した財産の額に基づき、修正申告(不足税金を支払う)または更正の請求(納めすぎた税金を返してもらう)を行うことになります。
  

 相続税を減額できる特例(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例)を使うために、当初の未分割で行なう申告書には「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付することが必須です。

 これを忘れると特例は使えませんので、注意が必要です。


 相続税申告は時間との闘い!細心の注意が必要です。





令和4年4月から施行される主な税制 
2022/05/16

 賃上げ促進税制が以下のように拡充されました。

  
 給与等支給額が増加した場合の税額控除制度について、

 令和4年4月以後開始事業年度(個人事業は令和4年1月にさかのぼる)から以下のように拡充されます。


 資本金1億円以下の企業等について、

 雇用者全体の給与等支給額が前年度比1.5%以上増加した場合に増加額の15%

 前年度比2.5%以上増加した場合は30%の税額控除となります。


 教育訓練費が前年度比10%以上増加している場合には税額控除率に10%を加算できます。


 税額控除額の上限は、法人税額または所得税額の20%です。


 なお、この場合、給与等に充てるため他の者から受け取る金額、

 例えば、

 雇用調整調整助成金、キャリアアップ助成金(正社員化コース)などの給与に充てる助成金を受け取っている場合はこれを除外します。

 雇用安定助成金は例外的に含めます。

 活用ください。