遺産分割のルールが変わる
2018/07/16

 相続制度の見直しを含んだ民法の改正法案が、今月6日に参院本会議で可決、成立しました。

 相続税の大幅な見直しは、1980年以来じつに40年ぶりです。

 結婚20年以上の配偶者の権利の拡大が、特筆すべき改正となっています。
 

最大の目玉は、結婚20年以上の配偶者の権利の拡大でしょう。


生前贈与か遺贈された自宅や居住用の土地が、
遺産分割の対象から外れ、
完全に配偶者だけの取り分となるのです。

これによって、配偶者は自宅を得たうえで、
残された財産の1/2の法定相続分を相続することが出来るようになり、

配偶者の老後の生活保障が可能となります。


「配偶者居住権」制度という制度も新設されます。

現行法では、遺産分割で配偶者が自宅を取得した場合、自宅の財産評価額が高額であると、

 他の財産、たとえば預貯金を十分に相続できない恐れがあります。

 他方、
 老後の資金を確保するために預貯金を相続すると、
自宅を失うことになる可能性があります。


 配偶者の老後の生活は、いずれにしても不安となる可能性があるわけです。


 改正法では、自宅を他の相続人が取得しても、配偶者は住み続けることができるよう、
自宅の価値を
「所有権」と
「居住権」に切り離し、
 配偶者はそのうち「居住権」のみを得れば、家に住み続けられるようになる制度も新設されます。

 
 高齢化社会に対応した改正、期待したいと思います。




役員退職金、金額の妥当性
2018/06/05

 会社の役員退職金支給額をどうするかは、いくつかの課題を含んでおり、実務上悩ましい問題です。

 この役員退職金の金額の妥当性について、納税者と国が争った事件で平成30年4月25日東京高裁が、東京地裁の判決を覆す判断を示しました。

 これは、控訴人が、死亡退職した元代表取締役への退職慰労金を損金として計上し法人税の申告をしたところ、「不相当に高額な」退職金として一部否認されたため、会社が訴えた事案です。

 この会社は、退職慰労金を「平均功績倍率」の1.5倍を用いて計算し支給したのです。


  通常、役員退職金の支給限度額は、法人税の規定に従い次の算式で計算します。

 
    最終月額報酬額×在任年数×功績倍率



 この「功績倍率」は「平均功績倍率」を参考にします。

では「平均功績倍率」は何かというと、
明確な法人税法上の規定はなく 同業類似法人において役員退職金に影響を及ぼす一切の事情を総合評価した係数の平均値、とされています。
あいまいです。
 
 また、別の課題もあります。

 最終月額報酬が計算の基礎となるわけですが、本当に「最終」月額報酬が、その退職する役員の在任期間における功績を一番よく表しているといえるでしょうか。

 経営者の高齢化が進む日本の中小企業において、退職する高齢の役員に、在任中最高額の報酬を支払える会社が一般的とは言えないのではないでしょうか。
 
 
 このように悩ましい課題をはらむ役員退職金、会社は役員退職金規定を会社の状況にあわせ見直す作業が必要と思われます。

生産緑地の活用法
2018/05/05

 生産緑地指定期間30年の満了期限が近づいています。


 日本の農業をどう守るか、
高齢化がすすむ社会で農業の担い手をどう確保するか

という課題は、

生産緑地をいかに生かすのか、

という問題に直結しています。



 今後新たに制定される法律
(仮称「都市の農地の賃借の円滑化に関する法律」)で、

生産緑地という、まとまった広さのある農地で農業を営みたい人に貸し付けることが可能となり、

生産緑地にかかる相続税の納税猶予が適用されることになりました。


 認定事業計画(仮称)にしたがって生産緑地の存続と活用を図っていくことになります。
 

 農家にとっては朗報であり、税理士としてもやりがいのある仕事となるでしょう。


 

一般社団法人を使った相続税逃れに歯止め
2018/01/18

 いったい相続税対策は何のために行うのか、を考えさせられる手法であった「一般社団法人」を使った相続対策に、2018年(平成29年)12月に公表された税制改正大綱で、歯止めがかかりました。
 

一般社団法人は、通常の会社のような株を持たない「持ち分のない法人」のため、
 法人の所有する財産は個人の財産とみなされず、
 相続税の対象とはなりません。
 

 これに注目し、同族会社の社長が自己の相続税を軽減するために、一般社団法人を設立し、自社株を移す手法が、近年流行っていました。
 

 古くから続く中小企業においては、経営者が骨身を削り経営努力をしてきた結果、思いがけず会社の株価が高額になるケースが多いのです。
 
 次世代の会社の事業承継者にとって、相続税の負担が重くのしかかります。

 会社を承継するために、相続対策は欠かせません。
 

 残念なことに、
 相続税や贈与税の納税猶予が可能になる
 「事業承継税制」はどう考えても使い勝手がよくありません。

 もっと手軽にできる相続対策はないか、いや相続税を逃れる方法はないか、
 と考えた人々が目を付けたのが、
 一般社団法人に自社株を譲渡もしくは寄付で移す手法でした。

 しかしこの手法が有効なのは、

 一般社団法人の有する財産が「誰のものでもない」というときに限るのであり、

 「実質的には同族会社に支配されている」と認められれば、相続税の対象になることになりました。


 2018年の税制改正大綱で、同族会社に支配された一般社団法人を判定する基準が明確になりました。


@ 相続開始の直前時点で、
  総役員数に占める
  同族会社役員数が2分の1を超えている。

A 相続開始前5年のうち3年以上、
  総役員数に占める
  同族会社役員数が2分の1を超えている。


 上記@Aのいずれかに該当すれば、
  
 「特定一般社団法人」と規定され、

 一般社団法人に移された自社株にも相続税を課すとされたのです。


 この同族会社役員には、親族だけでなく、被相続人が役員を務める会社の従業員なども含むと、されています。

 さあ、大変。

 今後一般社団法人を使った相続対策を実行しようとすると、外部の人間を半数役員にしなくならないことになるというリスク、会社を乗っ取られるリスクを負うことになります。


 税制改正大綱では、適用時期についても規定しており

原則的に今年4月1日以降に発生した相続に適用されるが、

 同日以前に設立された法人については2021年以降に発生した相続から適用されます。


 やはりうかつな相続対策、税逃れぎりぎりの対策は行ってはならない、という教訓になるでしょうか。







贈与
2017/12/02

平成29年も最後の月になりました。

この時期になると、相続対策のための「贈与」に関心が高まります。

贈与税は、1月1日から12月31日までを一課税年度とする暦年課税です。

もし平成29年度中に贈与を行いたいのであれば、12月31日までにする必要があります。
申告と納税は来年の個人確定申告で行います。

 さて、会社の事業承継の一つの柱が、会社の株の贈与です。
 
株主であり会社の代表者である親から、次期経営者の子に持ち株を贈与し、

事業承継を経済面から準備する必要があります。


 企業努力によって株の評価が上がり、いざ親の相続の時に大変な相続税の負担が発生し、会社の株を相続する事業承継者が納税に苦労することは避けなくてはなりません。

 会社の一株の評価を行い、毎年こつこつ贈与をつづけ、次期経営者に株を集中させていくことは企業防衛からやらねばならないことです。


 贈与は、こつこつ時間をかけて進めることが節税となり、贈与の王道と思いますが、

それでは到底追いつかないほど、会社の財産評価が高くなっている場合や
会社の代表者が高齢である場合は、

他の手段を考えなくてはなりません。


精算時精算課税は、相続開始時には、贈与した時点の財産の評価額が持ち戻しとなります。

先々の財産評価額など予測がつかないため、リスクが高く、利用することはなかったのですが、

たとえば税制改正で来年明らかに評価が高くなるであろうと考えられる「広大地」は、この制度を利用してもよいかもしれません。


また、使い勝手の悪さで利用者の少なかった『事業承継税制』も要件が緩和されていることから利用を検討すべきです。

しかし、はい、では贈与しましょう!はい、いただきましょう!と安易に贈与契約はできない、と考えます。

思いもかけない税負担、親族間トラブルの発生を予測せねばならず、贈与こそムヅカシイものはない、というのが実感です。


であるからこそ、お客様と時間をかけて話し合い、様々なリスクの回避策を講じたうえで、贈与を実行していただくよう仕事を進めていかねばなりません。

 今後ますます、会社の事業承継を主とする贈与はその必要性が高まり、
 専門家としての知識や技量が求められると考えます。




 

医療費控除 セルフメディケーション税制
2017/10/09

 保険会社から医療費控除の証明書が届き始めた今日この頃です。

 平成29年年度の年末調整の時期に入りました。

給与所得者はふつう年末調整という会社が行う作業で「所得税の精算」は終わります。

ただし、
年末調整では今年一年間にかかった医療費の控除は行えません。

税金を還付してもらうためには確定申告が必要です。


今年の医療費控除の目玉は、

「セルフメディケーション税制」

でしょう。


セルフメディケーションとは、翻訳すると、

自己治癒・自主服薬

という少々ムヅカシイ日本語になります。

医者にかかるほどでないけれど、風邪などの体調の不全を治そうと薬局で購入する薬代や、

予防接種を受け病気にならないために出費する医療費が、所得税の控除になる制度です。


年間支払額が1万2000円を超した場合に、

超えた部分の金額(上限8万8000円)が所得税控除できます。


従来からの医療費控除とどちらか有利な方を選択することになります。


平成29年度からの確定申告では、領収書に代えて「医療費の明細書」を添付することになりますが、

このセルフメディケーション税制を選択する場合は、

今後2年間は領収書の添付でも所得税控除を受けることができます。


ところで同制度はどの程度周知されているでしょうか。




都市農家を直撃する生産緑地問題2022年(その2)
2017/08/24

 生産緑地が解除される2022年は、

生産緑地を所有する農家だけでなく、

生産緑地を所有しない都市近郊農家や

地主でアパート経営などを行っている人々、

また私たちの生活、

さらには日本経済にとっても大きな影響が出ると懸念されます。

 25年前に生産緑地の指定を受け農業を営んできた方々も高齢となり、


また農業の後継者がいない場合、


農業の継続は困難になり、

2022年に生産緑地の解除を受け、

土地の有効利用(アパートを建てる、

開発業者に土地を売却し業者は戸建て住宅を建設するなど)

を行おうとする方が多く出ることは当然と思われます。

 相続税の改正で、

相続税の基礎控除が改正前の4割縮減となり、

税率も最高税率55%となっていることから、

これまで相続税とは縁がなかった人々においては、

自らの相続対策は必須となっています。


 いわんや、都市近郊に500u以上の生産緑地を有する地主においては、

2022年後の生産緑地解除後の相続対策は

喫緊の課題です。


 農地が宅地になる!

 アパートが大量に供給される!

(アパートの敷地は、貸家建付け地として土地の評価が下がるのです)
 

空き家が大量に発生する!


不動産価額が値崩れを起こす!



 上記の予想される状況は、

経済面で深刻な打撃を与えるでしょう。
  

経済的な打撃だけではありません。


都市部の貴重な緑地が失われる!


日本の農業が衰退する!

 

 日本の根幹にかかわる問題です。


 お客様には、生産緑地を維持し、

農業を続けることが可能な方策について

今後税制改正も見込まれるため、

最善の方策を共に研究してまいりたいと思います。




都市農家を直撃する生産緑地問題2022年(その1)
2017/07/30

 1992年にスタートした生産緑地の固定資産税の優遇措置は、

農家に30年間は生産緑地として指定された農地を売却せず農業を続けることを条件に、

きわめて低い固定資産税を課しています。


 その指定解除の期限が、

5年後の2022年に迫っています。


 通常、一般の農地の固定資産税は
宅地の200分の1程度に軽減されているのですが、

都市部やその近郊地域の「市街化区域」の農地は例外で宅地並み課税となっています。


 都市部の緑地保全のためもあり、

500u以上の農地を有する農家が生産緑地の指定を受けると、

固定資産税の大幅な減額や
相続税の納税猶予などを受けられる特例となっています。


 実際に昨年、相続税の申告で生産緑地の納税猶予の特例を使いました。


 2000uを超す生産緑地を相続した60代のお客様には、

「死ぬまで農業をやってください」

とお願いしたところです。


 万が一、農地を放置したり売却した場合は、

優遇措置を受けていた固定資産税が宅地並み課税となりさかのぼって課税され、

猶予された相続税も支払わなくてはならなくなるからです。


しかし、死ぬまで農業が続けられるでしょうか。



 弊事務所の別のお客様は、2022年を今から「楽しみに(!?)」されています。


 広大な農地を整備していくのは並大抵でなく、できれば売却して肉体的にも経済的にも楽になりたい、と願うためでしょう。



 2022年問題は大きな社会問題となりつつあります。





フィンテックで仕事を変える!
2017/05/05

 これからの社会を変える「フィンテック(Fin Tech)」の波が押し寄せています。

 フィンテックとは
 金融を示す「Finance」と
 テクノロジー(IT技術)を示す「Technology」
 からなる造語です。

 「ITを駆使した金融サービス」という内容でしょうか。


 平成29年5月5日(金)の日本経済新聞の朝刊によれば、麻生太郎金融相は、

 
 「銀行の支店はそのうちなくなる」

と話しています。
 

たしかに、消費者は、

スマートフォンに専用アプリなどを搭載すれば、

現金振り込みなど「金融サービスの窓口」

を気楽に持ち歩けるようになります。



現金振り込みだけではありません。

融資、送金、決済など

フィンテックを使えば、迅速かつ安価に行えるのです。


 我が事務所においても、

 忙しいお客様方がどんなにご苦労して振り込み作業を行っているか。

 時間の節約のご提案をできないものか、課題でした。


 また時間だけではありません。


 金融機関に支払う振込手数料や時間外現金引き出し手数料など、1件1件の金額は小さくても、
 ちりも積もればの例え通り、年間では大きな金額になります。


 フィンテックは、振込送金といった経済活動の場面一つにおいてもお客様方の味方になり事業を助けてくれるものと思います。


 研究を重ねたいと考えます。




会計は会社の命綱
2017/04/09

企業の会計不正が後を絶たちません。

東芝しかり。

現在話題になっている「てるみくらぶ」という格安海外旅行会社も不正経理で3月27日に東京地裁から破産手続き開始決定を受けたところです。

「てるみくらぶ」の被害者はなんと8万人におよぶそうです(『日経MJ』4月9日版)。


 会社の会計に携わる者として、

経営陣の危機感のなさ、

会計を甘く見ている姿勢にただ驚くばかりです。


日本を代表する歴史のある会社であっても

経営陣の姿勢次第ではあっけなく会社は傾くのだと、

今回学びました。
 


ひるがえって、我が事務所。

 
本当に素晴らしい経営者は、数字をおろそかにしません。

数字から、会社の危機の芽を察知し、すぐに行動に出、危機の芽をつぶし、新しい芽を育てようとします。

たとえすぐに芽は大きくならなくてもです。
 

一方、

会計を甘く見ている経営者もいないではありません。
 

事業が忙しいから、と言い訳をするわけですが、

会計を後回しにするのです。


会計処理の遅れ、

当方への資料提供の遅滞、

すなわち会計を後回しにした挙句、

厳しい内容の「キャッシュフロー計算書」というお金の動きをあらわしたものをお持ちし説明すると、


「なんでもっと早く言ってくれなかったの?
早くわかっていたら、ベンツ買わなかったのに」

とおっしゃった若い社長もおられました。
 

会社の決算は年1回です。年次決算です。


でも会社の決算は、

毎月、

毎週、

いや業種によっては

毎日

する必要があると思われます。
 

数字から、危機と希望を読み取るのです。










 でも会社の決算は、毎月、毎週、いや業種によっては毎日する必要があると思われます。
 数字から、危機と希望を読み取るのです。