生前贈与 ―使い勝手が良くなった「相続時精算課税」― | - 2025/01/01
- 生前贈与をお考えの皆様へ
相続時精算課税とは原則60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫などに対して行う贈与について、贈与者ごとに「暦年課税」に代えて選択できる贈与税の制度です。
これまで弊事務所では「相続時精算課税制度」はリスクが高すぎるため選択をおすすめ出来ませんでした。
なぜなら相続時精算と言っているように贈与者から贈与を受けた時点では有利であっても、 いざ、贈与者が死亡したとき(相続時)には贈与を受けた財産を相続財産に加算し清算する際にリスクが生じることがあったためです。 たとえば、「相続時精算課税」を選択した方が2000万円の不動産を贈与してもらったケースを考えましょう。
2000万円の不動産の贈与は「相続時精算課税制度」の特別控除2500万円を使うと贈与税額は0円。ああ、よかったとその時は考えるでしょう。
しかしながら、贈与者が死亡したときに2000万円の贈与財産の時価が1000万円に下がっていたらどうでしょう。
相続手続きでは「相続時精算課税制度」で受けた時の2000万円の価額のそのままを相続財産に加算しなくてはなりません。
このようなリスクがありよほど慎重に選択する必要があり不人気な制度でした。
ところが、国は令和5年度税制改正で、以下のような改正をしました。
すなわち「相続時精算課税制度」に110万円の基礎控除を新設したのです。
画期的なのは、60歳以上の親や祖父母から受けた年110万円以下の贈与は贈与税の申告が不要となったのみならず、贈与者が死亡しても相続財産にこれまで贈与で受けてきた年110万円以下の財産は加算しなくてもよい!ことになったのです。
「暦年課税制度」は、基礎控除110万円までの贈与であれば贈与税の申告は不要、ただし贈与者が死亡した場合は相続開始3年前までの贈与財産は相続税に加算するというものでした。
令和5年度税制改正で加算期間が3年から7年に延長されました。
生前贈与を行おうと考える場合、
「相続時精算課税制度」を選択すべきか、 「暦年課税制度」を選択すべきか
検討する必要が出てきました。
最大の留意点として、いったん「相続時精算課税制度」を選択した場合は、暦年課税への変更はできない、ということです。
したがって贈与税の税制改正や他の贈与税の特例をも勘案し、より良い選択を実現するために、これまで以上に贈与者・受贈者の状況、将来を見据え慎重に検討する必要が出てきたといえます。
|
|